著者
林 茂一郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.94-102, 1980-01-01

胎盤の機能分化を推察する目的で,妊娠各時期の胎盤計44例を用い,酵素抗体法(間接法及び直接法)によりHCG及びHPLの局在を妊娠週数別に検討し,次の如く結果を得た.1.酵素抗体法における非特異的反応を防ぐため,組織の固定段階で10%FBSを用い,また切片には正常羊血清を用いる事により,きわめて良い結果を得た.2.TrophoblastにおけるHCGの局在は,光顕的にはS細胞の細胞質内に認められ,L細胞には証明し得なかった.また電顕的には,S細胞のPerinuclear space とendoplasmic reticulumの。cistemae及びmembraneに沿って証明されたが,S細胞のmicrovilli及びL細胞には認められなかった.3.HCGは妊娠5週ですでに絨毛芽(syncytial sprout)及び絨毛脱落膜接合部に高度に認められ,9〜12週では絨毛枝(rami and ramuli chorii)にも高度であつたが,12週以後は滅弱し,40週でぽ終末絨毛(terminal villi)の一部にのみ証明し得たにすぎなかつた.4.HPLの局在は,光顕的にS細胞の細胞質内に認められ,L細胞には証明し得なかつた.また電顕的にはS細胞のnuclear membrane及びendopasmic reticulumのmembraneに沿つて認められ,Golgi complexも認められた.S細胞のmicrovlli及びL細胞には反応を認め得なかつた.5.HPLの反応は,胎盤の部位による差は認められなかつたが,妊娠8週ですでに見られ16〜18週でpeakを示し,血清中のそれよりも早期であつた.したがつてHPLは,細胞内ではPreまたはPre-HPLとして存在していることが予想された.