- 著者
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林 長河
- 出版者
- 専門日本語教育学会
- 雑誌
- 専門日本語教育研究 (ISSN:13451995)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.15-20, 2016-12-25 (Released:2020-09-08)
- 参考文献数
- 9
台湾の日本語教育には逆風が吹いている。グローバル化や少子化の影響を受け、定員割れの学科が続出している。2016年の入試試験では計23校、203学科に定員割れが見られ、このうちの6校では定員の半数以下しか新入生が集まらなかった。英語シフトと就職に役立つ学科が推奨され、日本語学科の価値が改めて検討されている。さらに大卒者の失業率が平均数値より高いことに対する世論の批判もさることながら、企業側が大学の教育内容のミスマッチを指摘し、社会のニーズに合った卒業生が少ないと嘆いていることなど、高等教育は批判の渦中に置かれている。これに対して、政府も教育機関も次第に改革に向けて動き出している。日本語の人材育成といった観点から見ると、日本語学科には、カリキュラム、教員のアイデンティティー、学生のキャリア能力開発を行なう第2専攻等の内容と制度の欠如、学科の競争力の向上などの課題があり、カリキュラムの見直し、業界との連携によるビジネス・観光日本語の開発、インターンシップの導入などにより、学科の付加価値を高めるといった対策が立てられている。今後の課題として、高等教育における専門日本語教育の深化、非専攻のJOP (Japanese for Occupational Purposes)教育などの研究と実践、中等教育の日本語教育の拡大が望まれる。