著者
林田 望海 勝間 亮
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2020-CSEC-88, no.31, pp.1-6, 2020-03-05

現在,空港で飛行機に乗る際や建物の出入りをする際の様々な認証システムが開発されている.その例として,パスワードや IC カード,指紋認証などがある.しかし,これらの認証システムは特徴量を認識するために文字の入力が必要であったり,カードや手をかざす等の特別な動作を必要とする.一方,人の歩く動作には多くの要素を持ち,その人特有の歩き方を認識することで移動中に人物を特定でき,先に述べた認証のみを目的とした動作を行わなくてよくなると期待されている.本研究では,複数の振動センサを設置した床を靴を履いたまま歩くことにより,複数個所で得た加速度データから履物および人物を識別することを目的とする.本稿では,センサの個数と識別精度の関係を調査する実験の成果を報告する.実験では,振動センサを木製の床に 4 箇所設置し,その上を 3 人の被験者が 2 種類の履物(スリッパ,スニーカー)で歩行し,それにより生じる床の振動を検出し,畳み込みニューラルネットワークを用いて識別精度の検証を行った.実験結果は,センサ 1 つの場合,履物の識別は 90%~94% であり,人物の識別では 86%~99% であった.センサ 4 つの場合,履物の識別は 96% であり,人物の識別は 97% であった.履物の識別はセンサを組み合わせることで精度が向上することが分かったが,人物の識別は必ずしもそうはならなかった.