著者
棚田 省三
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.960-966, 1983-07-01

下垂体からのluteinizing hormone(LH)の分泌に関する視床下部の働きについては,主にratにおいて研究されているが,よりヒトに近いと思われる霊長類においては,あきらかではない.そこで,ニホンザルmacacas fuscatusにおいて視床下部諸核に電極を刺入,電気刺激を加え,血中LHの変化を調べた.その結果,(1)弓状核,腹内側核においては,250μA,500μAの電気刺激と共に血中LH値は上昇した.(2)室旁核,視索上核においては,250μA,500μAのいずれの刺激によっても血中LH量の変化は認められなかった.(3)視索前野において,血中LH量は内側核の250μAの刺激によっては変化しなかったが,500μAの刺激によっては上昇した.また外側核の250μA,500μAの刺激には,いずれも変化を認めなかった.(4)放出されたLHの血中からの半減期は35.4分,33.4分,48.4分,43.1分とヒトLHの血中よりの半減期に比べて,短かいものであった.以上の実験結果から,下垂体よりのLH分泌には,視床下部の弓状核,腹内側核が主に関与し,また視索前野内側核も関与しているが,弓状核,腹内側核とは異なることが朗らかとなった.