著者
森下 光
出版者
公益社団法人日本ガスタービン学会
雑誌
日本ガスタービン学会誌 (ISSN:03874168)
巻号頁・発行日
vol.16, no.61, pp.59-69, 1988-06-10

ガスタービンエンジンは、多種燃料が使え、セラミック化により性能が大巾に向上できるため、将来の自動車用動力源として有望視されている。米国・欧州・国内の主要自動車メーカーを中心にガスタービン車の研究開発が行なわれてきている。セラミック化開発は、米国・欧州では国家プロシェクトとして推進されてきており、我国においてもムーンライト計画で開始される運びにある。これまでの概略経過としては、航空機用エンジンとして成功したガスタービンを車両用として試作したデモンストレーション時代(1950年代)の後、米国では実用化を目指して積極的な開発が行われている(1960年代〜1970年代)^<(1)(2)(6)(7)>。GM社とFord社は、トラック・バスなどの大型車両用を、Chrysler社は乗用車用の開発を進め、この間GM社による累積370万kmに及ぶユーザーテスト、Ford社による生産検討、Chrysler社によるモニターテストが行なわれた。GM社は乗用車用ガスタービンの開発を並行して進めている。欧州においては、ほ父同時期にLover/Leyland(英国)(8)(9)、United Turbine(スウェーデン)^<(10)(11)>、続いてVolks Wagen^<(12)>、MTU(Motor-en-und Turbinen-Union)、Daimler-Benz^<(13)>(西独)が、ガスタービン車の開発を推進してきている。国内においても日産自動車^<(14)>、三菱自動車^<(15)>、小松製作所^<(16)>、トヨタ自動車^<(17)>等ガスタービンの特性を活かしたガスタービン車の開発が進められてきている(1960年代末〜)。自動車用ガスタービンエンジンは、ガスタービンとしては小形であり、熱交換器を有する再生サイクルであるという特徴を持っている。各国における開発の積み重ねにより、自動車用動力源としての特性に適合していること、多種燃料性・低振動・低公害等優れた特性を持つこと、及び実用化の可能性の高いことが実証されてきている。課題は熱効率の向上であるが、タービンを中心とする高温部位のセラミック化によるタービン入口温度(サイクル最高温度)の高温化によって、低熱損失将来ディーゼルエンジンに競合できる熱効率が得られる(図1、図2)^<(5)(49)(18)>。セラミックガスタービンでは、サイクルの最高温度を耐熱合金材料での限度1000〜1050℃から、1370℃程度まで飛躍的に上昇できるので、低コスト・無冷却翼の小形ガスタービンで高効率エンジンが実現できる(表1)^<(19)(20)>。自動車用ガスタービンの開発は、各国共セラミック化が中心課題となっている(1970年代末・1980年代前半〜)。エンジンメーカー、セラミックメーカー、研究機関の連携及び国家プロジェクトとして、セラミックガスタービンの実現を目指した開発が推進されている^<(21)(22)(19)(20)(23)(24)(25)>。