著者
森川 俊生
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.30, 2020-03-15

地上波のテレビ番組において,30 年程前までは「映像の補足説明」に過ぎなかった文字テロップが,今や「映像」と「音声」に並び立つ主要な表現手段の一つとなっている。現在地上波で放送されているテロップを目的と機能に沿って細かく分析すると大きく10 のカテゴリーに分類されるが,その中でも1990 年代以降,急激に増加したのがサイドテロップである。テレビのリモコン普及とともに,ザッピング対策を主な目的として始まったサイドテロップの現状を分析すると,番組のジャンルごとに大きな特徴が見られた。 サイドテロップの目的には大きく「視聴者の理解を助けること」と「視聴者の興味を引き付けること」の二つがあるが,報道情報番組においては前者が,バラエティ番組においては後者が主な目的となっており,さらに報道情報番組ではその色調によって番組のイメージカラーを印象づけて類似番組との差別化を図る手段となり,バラエティ番組ではカラフルな色づかいにより画面を華やかにする役割を担うなど,多様な目的を持つようになっていることがわかった。過去30 年を通して,テロップが地上波の番組に質的変化をもたらしたのである。