著者
森山 郁子 植田 充治 赤崎 正佳 一條 元彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.769-775, 1982-06-01

ヒトの妊娠22週および分娩時における臍帯血を採取し,また,それらの新生児血液を採取し,総アミノ酸量(FAA)を測定し,また,タウリン(T)に注目してその量を測定したところ,胎生期においてはFAAは母体血より高く分娩時に低くなり,以後新生児では一定の値を示したが,Tのみは他のアミノ酸に比べて高い値を示した.臍帯血のT重は胎生期に高く分娩時に次第に低くなり,新生児では日数と共に低下し,出生9日目でほぼ正常値に近づいた.他のアミノ酸と異なる動態が明らかとなった.この事実を解析するために正常およびStarvationの妊娠ラットについて比較を行つたところ,正常妊娠では臍帯静脈血および胎児動脈血では17,18および19日の間でFAA5,800〜7,O00μg/dlおよび5,700〜6,250μg/dlの範囲値で母体血の2,500〜3,150μg/dlのほぼ2倍の値を維持していた.羊水は18日で4,150μg/dlであり,20日では8,850μg/dlと上昇していた.これに対してTは母体血では18日目に最も高く360μg/dlとなり20日目にほぼ半分の正常値に近づいていた.しかし臍帯静脈血では18日目に最も高く680μg/dlで以後20日目に320μg/dlと減少しており胎児動脈血では18日目に1,150μg/dlと異常に高く,20日目には280μg/dlとたった.羊水中では380〜400ug/dlの間にあり,ぽぽ一定の値を示した.この動物にStarvationを行うと母体血ではStarvationの程度がつよいとFAAの値は上昇し,また,臍帯血値も上昇した.羊水中ではほぼ一定であった.しかし,Tのみは母体ならびに胎仔血中では著しく上昇していることが認められた.但し,羊水のみはStarvationの影響は認められず対照とほぼ等しい値であった.これらの実験事実から,著者らはFAAの変動の意義とT生成量の増加について若干の考察を行つだ.