著者
植田 博之
出版者
関西学院大学
雑誌
KGPS review : Kwansei Gakuin policy studies review
巻号頁・発行日
vol.6, pp.63-87, 2006-03-15

本研究は、自治体版CASBEEが評価した集合住宅を対象に、6分野21項目の評価指標におけるスコア傾向を統計的に分析し、環境配慮設計の現状と課題を明らかにすることを目的とする。そして知見をふまえ自治体版CASBEEの問題点を考察する。調査手法としては、自治体版CASBEEによる評価の実施・届出が制度化されている名古屋市と大阪市に着目、同市域で1年間に着工された集合住宅の評価スコアをデータベース化し、その傾向を分析した。このような視点による調査分析は、建築物をとりまく「環境」について、多様な評価基準どうしの相対的な配慮傾向が把握できるため、今後重点的に取り組むべき「環境」の対象をより具体化するための基礎的データになると考えられる。本研究の結果、CASBEEの規定する6つの評価分野相互については、「室外環境(敷地内)」と「敷地外環境」の2分野に属する各環境性能評価項目のスコア傾向が一般的な技術レベル・社会水準を十分満足するに至っていないことが明らかとなった。また現行の総合設計制度は「室外環境(敷地内)」の評価スコア向上に寄与し、床面積規模は「室外環境(敷地内)」と「敷地外環境」に属する各環境性能評価項目のスコア傾向に影響を与えていることが確認できた。自治体版CASBEEミの問題点については、自治体による評価基準の修正・変更がスコア傾向に大きな影響を与えていることが得られた。