著者
榊田 朋広
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部考古学研究室
雑誌
東京大学考古学研究室研究紀要 (ISSN:02873850)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.39-92, 2009-03-20

続縄文時代から擦文時代にかけての社会の大きな変動期を研究するための基礎作業として、北大式土器の編年を現在の資料水準に則り整備した。北大式の編年は、先行研究に対する内省的検討や相互批判の欠如が多くの混乱をもたらし、いくつもの案が乱立しているのが現状である。そのため、近年の資料の増加にもかかわらず、研究そのものは深刻な停滞状況に陥りつつあるといっても過言ではない。そこで、まず研究の流れを概観し、今日もとめられる北大式研究が、資料の実態に即した時間軸の設定と、土器の型式学的変遷の見極めであることを指摘した。次に、土器の特徴や出土状況といった考古学的情報を最大限に活用し、現在設定し得るかぎりの時期区分案を提示した。さらに、隣接諸型式からの影響も考慮しつつ、北大式の成立・変容の実態について詳細に論じた。