- 著者
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榎本 優樹
深町 賢一
- 雑誌
- 研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
- 巻号頁・発行日
- vol.2018-OS-142, no.6, pp.1-8, 2018-02-20
OS のユーザランド構成における粒度は OS ごとに様々であるが,運用面を重視すれば,より小さな粒度でのアップデートやリスタート,ロールバックなど,こまやかなシステム管理ができるように OS ビルドシステムを再構成するべきである.歴史的経緯により,Linux ディストリビューションは粒度の細かなパッケージ群から OS が組み上げられているが,BSD Unix はシステム全体でも十数種類の分割で,かつ基本的に上書き処理という粒度の荒い構成となっており,改善が望まれる.そこで,我々は,NetBSD ベースシステムをパッケージ化するシェルスクリプトベースのシステム basepkg を開発し,より細かな粒度でのシステム管理と機能拡充を実現した.basepkg を pkgsrc (NetBSD サードパーティソフトウエア管理フレームワーク) の上に作成することで,既存の不完全なフレームワーク syspkg にくらべ,より少ないコード量で見通しの良いソフトウエアとなっている.また,実運用環境下での評価のため,ベースパッケージ配布サーバも試験運用している.本システムは,NetBSD ユーザやカスタマーにとっての利便性向上に寄与すると考えられるが,解決するべき課題も多い.本稿では,一つの大きなシステムを細かい粒度へ再構成した実践例において,以前より改善できた点と,再構成したことで新たに生じた課題について報告する.