著者
橋本,学
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集
巻号頁・発行日
no.51, 1998-03-24

兵庫県南部地震前後の測地データを解析し, 地殻変動を明らかにした。広域の変動としては, 震源の東西のGPS連続観測局が震源方向に, 南北のGPS観測局が震源と反対方向に移動したことが特徴的である。しかし, 震源域周辺のより稠密な測量の結果, 野島断層近傍の三角点の約1m南西への移動, 神戸側の各三角点の六甲断層系を境にした右横ずれ変位, 神戸市垂水区で須磨断層を境に西側に約19cmの隆起と東側に約7cmの沈降, 淡路島東岸で約20cmの隆起等が明らかになり, 複雑な断層運動が示唆される。これらの結果に基づき断層モデルを推定した結果, 野島断層, 明石海峡付近及び六甲山直下に1〜2.5mの右横ずれが卓越したすべりが推定された。"震災の帯"直下に断層を仮定したモデルは測地データを満足に説明できず, 測地データは"震災の帯"直下の断層運動を支持しない。