- 著者
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櫻井 信也
- 出版者
- 県立施設 神奈川県立国際言語文化アカデミア
- 雑誌
- 神奈川県立外語短期大学紀要 総合編 (ISSN:03881687)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, pp.51-65, 2000 (Released:2018-02-22)
最近、大学生のなかに新しいタイプの対人恐怖症者が増えているように思う。彼らは、古典的、平均的な対人恐怖である赤面恐怖や視線恐怖のように個別的に取り出しやすい症状を持つのではなく、級友や同じサークルの学生の前で、不安が生じてうまく話ができないことや、友人ができないことを訴え、人と親しくかかわる能力のなさを悩むのである。また、このような学生は、明るく社交的でなければならないという思いがあり、多くの友人をもてず、ひとり孤独でいることに恥じを感じているのである。そして、自分の対人恐怖的心性が相手に見透かされることをひどく恐れるのである。そんな自分は、友人に値しない、つまらない人間として拒否される不安を持つからである。私は、1987年の9月から1999年の3月まで東京近郊の4年制大学の学生相談室のカウンセラーとして学生の相談に応じていたが、こうした悩みを抱える学生と多く出会っている。そこで本論では、最近、大学生に多く見られる対人恐怖症について、典型的な事例を取り上げ、その臨床的特徴と、対人恐怖症の症状論のなかでの位置づけ、そして彼らが治癒していく過程のなかでの「対人関係からの閉じこもり(内閉)」のもつ意味について論じた。