著者
歌野 博
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-7, 2005-01-31

書物の表紙の裏の部分をさす「見返し」という用語は、これまで和装本、洋装本を問わず用いられてきた。書物の製本構造上、「見返し」を必要とするのは洋装本だけである。洋式製本の技術が導入され、定着した明治中期以前に「見返し」が用いられた形跡は見出せない。当時の文献に徴し「見返し」は洋装本の盛行とともに和装本に転用された用語であることを確認した。書物の部位名称に着目し、書物の構造との整合性を考察することにより、和装本、洋装本の違いを明らかにするとともに、その文化的意味について言及した。