著者
永田 正一
出版者
Japan Society of Calorimetry and Thermal Analysis
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.151-159, 1995-07-30 (Released:2009-09-07)
参考文献数
29

ゼロ磁場冷却(Z.F.C.)および磁場中冷却(F.C.)という用語はスピングラスの研究において導入された。この専門用語が使用されるようになった経緯について記述している。これらの用語は磁性および超伝導の分野において,実験事実の相互の関連を明瞭に結びつけるのに役立つ。スピングラスと超伝導の二つの場合についてZ.F.C.とF.C.の磁化率に関連した事柄を簡単に記述している。スピングラスのようなランダム系においては,たとえ低磁場といえどもF.C.は系を熱平衡状態に導く役割を果たすと思われる。スピングラスにおいてはZ.F.C.とF.C.の磁化率の違いは本質的で基本的な問題を提起する。一方,超伝導体についてのZ.F.C.とF.C.の磁化率の実験は測定試料の質を診断する上で重要な役割を果たし,超伝導特性に関する錯綜した実験結果を整理することができる。応用範囲が広いため,実りの多い議論がZ.F.C.とF.C.の磁化率において一般的に展開されるようになった。これらの低磁場での高精度の実験が可能となったのは,超伝導量子干渉計(SQUID)の長き渡る技術開発の成果である。今日,SQUID装置を商品として購入できるが,SQUID開発に携わった多くの研究者および技術者の努力に感謝し過ぎるということはない。