著者
江口 洌
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.94-73, 2003-09-30

『書紀』は,天皇位に空白があってはいけないことを書いている。しかし『書紀』の紀年構成を見ていくと,その天皇位空白年が六ヶ所もある。それも3年に及ぶ空白もある。どうしてその空白を『書紀』は認めているのだろう。その理由を探ってみたい。紀年構成の理解には,暦数と易数への理解が必要である。日の皇子思想を強調する天皇王権は,太陽神と天皇権を重ねる目的で,太陽の運行(暦数)や天・地・人の相関関係の数字(易の三才関係の数字)を神秘化して,天皇紀を創っている。ここではその空位期間の1つである初代天皇神武崩御年から2代天皇綏靖即位年までの3年間の空位がどうして生じているのか,その理由を探ってみた。『書紀』時代の天皇を基軸として組み立てられた紀年構成において,神武と綏靖とを「威霊再生の関係」で以て,天武と元明とに関係づけようとした結果であることを説く。
著者
江口 洌 エグチ キヨシ Kiyoshi EGUCHI
雑誌
千葉商大紀要
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.94-73, 2003-09-30

『書紀』は,天皇位に空白があってはいけないことを書いている。しかし『書紀』の紀年構成を見ていくと,その天皇位空白年が六ヶ所もある。それも3年に及ぶ空白もある。どうしてその空白を『書紀』は認めているのだろう。その理由を探ってみたい。紀年構成の理解には,暦数と易数への理解が必要である。日の皇子思想を強調する天皇王権は,太陽神と天皇権を重ねる目的で,太陽の運行(暦数)や天・地・人の相関関係の数字(易の三才関係の数字)を神秘化して,天皇紀を創っている。ここではその空位期間の1つである初代天皇神武崩御年から2代天皇綏靖即位年までの3年間の空位がどうして生じているのか,その理由を探ってみた。『書紀』時代の天皇を基軸として組み立てられた紀年構成において,神武と綏靖とを「威霊再生の関係」で以て,天武と元明とに関係づけようとした結果であることを説く。
著者
江口 洌
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.104-79, 2006-12-31

「初期万葉」は、朝廷が、王権意識とその指導理念とを示そうとした勅選の歌集である。それは、同じ時代思潮の中で、王権が企画、監修した『古事記』、『日本書紀』そして『風土記』と全く同じ性格の編纂物であった、と見る。天皇思想は、王権を天の存在として主張した。もうひとつ、革命を恐れた王権は、和の世界を主張した。そこに用いたのが中国から学んだ天・地・人の合一の精神であった。そうして、天の示す暦数、そして天(9)・地(8)・人(6)和合の数字を聖数とした。小論の主題は、「初期万葉」が、その天・地・人の構成を採り、その人部が柿本人麻呂の作品から成っているということであり、その証明であった。そのことを言うために、「初期万葉」の構造面での発展経緯を説くと共に、そのそれぞれの段階に働いた政治的な思惑に触れ、天分暦数、天文地理、陰陽五行説などいくつもの視点から触れることになった。もう一点、副題の柿本人麻呂という名前について。天・地・人構成の人部に人麻呂の作品のみが宛てられていることを証明し、柿本人麻呂が初めから人麻呂という名であったか、人部に作品を宛てられたことで、その名を人麻呂としたのか、という謎の問題を提示した。