著者
池尻 忠夫
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.16, no.165, pp.394-400, 1967-06-15

高電圧小電流アークによる劣化の性質を放電形式、電極配置、絶縁材料の種類を種々変えた場合について調べた。そしてアーク劣化ではいくつかの劣化の形式が存在することを明らにした。またその劣化機能についても考察した。その結果、次のような結論を得た。(1)アーク劣化は放電形式により影響されるところが大で、孤光状花火では劣化は大きく、せん光状火花の場合では劣化の程度はきわめて小さく炭化は起こらない。(2)アーク劣化は電極配置により異なり、特異焼損図形を伴いトラッキングにより劣化する場合、電極軸にほぼ直角方向に生成される炭化侵食部を生じ、最終的にはトラッキングに進展する場合、アークの腹により燃焼蒸発を起こし内部に向かい劣化する場合などのいくつかの形式がある。(3)絶縁材料の種類により、劣化は炭化する場合、溶融炭化する場合、溶融するが炭素を遊離しない場合の三つの形式が存在する。そして、絶縁材料の分子構造中のフェニール基の有無やC/H,C/F(個数比)などとこれらの劣化形式がかなり関係あることが推察される。(4)高電圧小電流アークによる劣化では高電界の影響が存在する。