著者
池田 マイケル
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.11-18, 2008-01-31
被引用文献数
3

本研究は本文用欧文書体を通して、SD法を用いた印象評価実験を行うことにより、通念的な印象と、実際の印象の整合性を検証した。また、それをすることによって、書体のもつ造形的特徴が、どういった印象を誘発しているのか関連性を探った。今回の実験では、用途別、国別、様式別という選定基準から選出した、Gill Sans、Futura、Frutiger、Caslon、Didot、Palatinoの書体に対して、SD法データに基づいた因子分析とクラスタ分析を行った。その結果、書体の印象を説明しうる共通因子として「穏和性と曲線美」、「完全性と均衡美」、「重厚性と品格美」、が抽出された。それらをもとに分析を進め、最終的に「書体の通念的印象と実際の印象は、ある程度は一致するが、そうでない部分も多い」、という結論に至った。また、装飾性の低さと、ストロークが均一であることが「読みやすい印象」を誘発する最も強い造形的特徴であることも分かった。