著者
河原 栄治 江本 泰二
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.p188-194, 1977-10

シルフィウムの形態的ならびに生理的特性に対する日長効果について昭和49年から3ヵ年に亘り,秋田県立農業短期大学で調査した。その結果は概ね次のごとく要約できる。1.8月中旬の草丈・葉面積・地上部重・地下部重および根重については,自然日長区と長日区との間に差がなかった。ただ,同時期の播種当年の自然日長下の葉面積ならびに地上部重は長日下の場合よりも高い値を示し,播種後3年目の地下茎重は反対に長日区の方が高かった。一方,秋期の短日下での上記諸形質は長日区の方が自然日長区よりも高い値を示した。2.8月中旬に測定した茎葉数と茎の太さは日長との間に関係がなく,しかし11月中旬の調査では茎葉数は自然日長下の場合よりも長日処理区で多かった。3.播種当年には茎の基部の節間は伸長しなかったが,2年以降の11時間日長の短日処理における個体の節間についても同様であった。上記の場合を除き,節間は2年目以降に伸長することがわかった。そして,基部の節間が伸長するためには少なくとも15・6葉が基本的に必要であると考えられた。4.蕾の形成に対しては自然日長と長日との間における効果の差はなく,11時間の短日長は蕾の形成を強く抑制した。したがって,短日下の開花は極くわずかであり,自然日長下と長日下ではかなり開花し,開花時期も概ね同時期であった。これらの結果から,シルフィウムは量的長日植物であろうと推定した。5.8月中旬調査したT/R比には自然日長ならびに長日処理間に差がなく,短日下で前二者に比し明らかに低い値を示した。そして,苗令が進むにつれてT/R比は低下することを認めた。一方,11月中旬調査のT/R比は長日下の方が自然日長下よりも高い値を示した。なお,8月中旬における播種当年の株の自然日長下のT/R比は長日下よりも高い値を示し,上記の結果とは必ずしも一致しなかった。6.長日処理は種子の生産に有利な効果はなく,他方,短日処理はその生産を極端に抑制することがわかった。