著者
河合 章男
出版者
Japan Society for Information and Media Studies
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-24, 2004

本稿は,明治期の子ども向け投稿雑誌『穎才新誌』誌上に,明治20年に登場した俳句欄について考察する.まず,『穎才新誌』の概要をとらえ,19世紀末に子ども向けの投稿雑誌が刊行された意味を把握する.次に,明治20年におけるこの雑誌の俳句欄の参加者が,北海道,沖縄を除く全国に広がっていたことを確認し,その広がりの特徴を分析しつつ,この雑誌への参加者が個人という資格で参加していることから,そこに近代的な文化活動の萌芽があることを考察する.最後に,明治20年におけるその俳句欄の参加者から3人の俳人を推定し,それぞれが果たした文化的役割を調査することによって,『穎才新誌』の果たした役割を考察する.また雑誌というメディアが当時の人々に,地縁を超え,個人として文化に参加する場を提供していたことを論じる.