著者
浦上 淳 平林 葉子 富山 恭行 河瀬 智哉 吉田 浩司 岡 保夫 平井 敏弘 角田 司
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.38-44, 2012 (Released:2012-03-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

症例は76歳女性で糖尿病,慢性膵炎の既往がある.第12胸椎の圧迫骨折のため脊椎短縮術,後方固定,後側方固定術を施行された.腹臥位で,手術時間6時間20分であった.麻酔覚醒後から腹痛が出現し,術後1日目も腹痛は強く,膵酵素,WBC,CRPの上昇を認め,予後因子スコア5点で重症急性膵炎と診断.造影CTでは膵頭部の腫大および膵頭部内の造影不良域を認め,右腎下極以遠までの滲出液貯留を認めたため,造影CT grade 2と診断.蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法などの治療を行った.術後16日目の造影CTでは膵頭部の造影不領域が増大し,右後腹膜膿瘍も増大した.十二指腸の壁構造は消失し,十二指腸壁の壊死と考えられた.術後18日目に膵頭十二指腸切除術(PD)を行った.手術では十二指腸は広範に壊死に陥り,後腹膜膿瘍を形成していた.術後は縫合不全など大きな合併症はなく,PD術後101日に退院した.