著者
木村 綾子 板垣 喜代子 渡部 菜穂子 福士 理沙子 浅田 一彦
出版者
弘前医療福祉大学紀要編集委員会・弘前医療福祉大学短期大学部紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学・弘前医療福祉大学短期大学部紀要 (ISSN:24350915)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-21, 2020-03-27

高次脳機能障害に対するリハビリテーションの中のレクリエーション療法には囲碁も行われている。囲碁が高次脳機能障害に効果をもたらす可能性があることが先行研究や講演で発表されてきているが、その効果に関し研究された論文は少ない。そのため、本研究では囲碁と高次脳機能障害に関する文献検討を行い囲碁の効果の明確化と対象者への効果的な介入方法の考察を目的とした。2019年5 ~ 6月に、医学中央雑誌、KAKEN、J-stage、CiNii、PubMed の検索エンジンにて、キーワードを囲碁・GOgameとして抽出・絞り込みを行い、1980~2019年に発行された32論文の内容を検証した。対象者の年代は子供から高齢者であり、健常者の他、発達障害を持つ子どもや脳卒中・認知機能障害患者が対象とされ、囲碁経験の有無による比較実験が行われた文献もみられた。結果より、囲碁を打つことは脳の運動前野、頭頂内溝および左頭頂内横断と後頭横溝の接合部付近の視覚域や多くの皮質野の活性化を導くことにつながり、高齢者の認知機能の改善、視覚性作業記憶・注意・実行機能が向上する効果があるとされた。これらの効果は対局、つまり人との交流を持つことでより高まるとの報告も得られた。高次脳機能障害者には日中の活動場所の確保などの課題があるが、効果的な囲碁の指導方法を工夫しつつ囲碁交流会を開催することは居場所づくりや人との交流の機会の増加、脳のトレーニングにつながり、高次脳機能障害者の一助になると考えられる。
著者
板垣 喜代子 木村 綾子 渡部 菜穂子 福士 理沙子 浅田 一彦
出版者
弘前医療福祉大学紀要編集委員会・弘前医療福祉大学短期大学部紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学・弘前医療福祉大学短期大学部紀要 (ISSN:24350915)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-37, 2021-03-29

高次脳機能障害のリハビリテーションには、レクリエーションが含まれる。 本研究の目的は、高次脳機能障害とレクリエーションの効果に関する文献検討を行い、レクリエーションの効果の明確化と対象者への効果的な介入方法を考察することである。 2020年5 ~11月に、医学中央雑誌、KAKEN、J-stage、CiNii、PubMedの検索エンジンにて、キーワードをレクリエーションとして抽出・絞り込みを行い、2001~2020年に発行された34論文を検討した。対象者の年齢は子どもから高齢者であり、脳外傷、脳卒中、脳血管性とアルツハイマー型認知症を含む認知機能障害及び失語症患者が対象とされ、健常者とレクリエーションの効果に関する比較実験も報告された。 結果から、脳外傷者はレクリエーションを通して笑い、楽しいと感じて、前頭前野を刺激して対象者の認知機能を向上させ、自らの病状の自覚を促し対人関係の改善につながる効果があると報告された。二重課題の効果は、認知症の高齢者が椅子に座り指を折りながら数を数える論文と、脳卒中患者間の実験で歩行と転倒認知運動の干渉を軽減させるという論文があった。一方で、脳卒中患者と健常者の歩行と二重課題の比較実験で脳卒中患者は前頭前野の活性が優位に低かった報告があり転倒のリスクが示された。 高次脳機能障害者の多様性を考慮し安全で適切なレクリエーションを実施することで、前頭前野を刺激し認知機能と身体機能及び社会性も維持、改善する可能性が示唆された。
著者
千葉 さおり 佐藤 彰博 浅田 一彦
出版者
弘前医療福祉大学紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学紀要 (ISSN:21850550)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.65-72, 2015-03-31

臨床実習においてコミュニケーション能力の低下などによって、指導者から不適格とされる学生が増えている。そこで、作業療法士・言語聴覚士を目指す学生と実習指導経験者のコミュニケーション・スキルの違いを明らかにすることを目的とした。本学医療技術学科1・2 年生(学生群)と指導者(指導者群)を対象に、コミュニケーション・スキル尺度ENDCOREs(藤本・大坊、2007)を用いてコミュニケーション・スキルを測定した。得られたデータを全項目得点平均値、下位尺度毎の平均値、サブスキル毎の平均値の差について2 群間での比較を行った。さらにクラスタ分析によって得点パターンの分類を行い、学生・指導者と各クラスタの関係をχ2独立性の検定によって分析した。その結果、下位尺度毎の比較では他者受容のみが学生群において有意に高かった。また、得点パターンは3 つのクラスタに分類されたが、学生・指導者と各クラスタの関係に統計学的な差はなかったことから、両群のコミュニケーションの対象の違いが影響している可能性が考えられた。限定的な学生の対人関係において、自己のスキルについて振り返りや気づきがされにくいと考えられるため、自己のコミュニケーションについて振り返る機会を設けたり、社会と関わる機会を作ったりすることが必要であると考えられた。