著者
浅野 さとえ 岡部 省吾 池田 美智子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.945-950, 1991-10-01 (Released:2011-09-29)
参考文献数
14

職場内で感染したと思われる2例の男子成人麻疹を経験した。症例1は23歳男子で高熱, 皮疹, 下痢を主訴として来院し同日入院。麻疹既往を主張したため, 伝染性単核症として治療されたが, 皮疹より麻疹が疑われた。入院翌日より, 呼吸困難出現, 心陰影の増大, CPKの上昇, 心電図所見より, 心筋炎合併と診断された。血清学的所見より, 麻疹と確定診断された。10日頃より複視と頭痛が出現, 外転神経麻痺と診断され, 麻疹後脳炎が疑われたが, 次第に軽快し約2ヵ月後治癒退院した。症例2は22歳男子で高熱, 血尿を主訴とし, 当院内科入院, 入院後皮疹出現, 翌日呼吸困難出現, 心筋炎合併の麻疹と診断された。症例1, 2はその後職場が同一であることが判明, 発症のずれが13日であることから症例2は症例1より感染したと考えられた。麻疹の合併症としては肺炎, 脳炎が良く知られているが, 心筋炎の合併は稀であり報告は少ない。心筋炎合併の2麻疹例を報告すると共に, 麻疹ウイルスの構造, 特殊性, 変異など, 近年注目されている事項について言及した。