著者
深谷 雅子
出版者
秋田県果樹試験場
巻号頁・発行日
no.27, pp.24-35, 2001 (Released:2011-03-05)

ブドウ晩腐病菌の第一次伝染について,越冬伝染源からの分生子捕捉法,及び分散時期,分散に関与する気象要因,さらに果房の感染時期の検討を行った. 1.越冬伝染源である結果母枝において,枝の基部よりも上方の節部や前年の着果房の穂梗基部及び巻きひげに晩腐病菌の分生子が多量に形成された. 2.穂梗基部の直下に雨水採集装置を設置することにより,降雨により落下した分生子が効率的に捕捉された. 3.綿球で越冬伝染源の穂梗基部をなぞる方法は,分生子を簡易に捕捉することができ,分生子形成時期の把握に有効であった. 4.越冬伝染源である穂梗基部からの分生子の分散は,秋田県においては,主として6月上旬から9月上旬に起こることが,過去12年間にわたる調査で明らかになった. 5.越冬伝染源からの分生子の分散開始に関与する気象条件は,分散開始日を含む前3日間の平均気温の平均値が15℃を,また最低気温の平均値が10℃を越える値を示し,3日間の合計降水量が10mm以上である.さらに,これと同様の気象条件が,分散開始前にもう1回訪れることが重要であった. 6.果房の感染は,果粒の横径が2~3mmのアズキ粒大の頃から,硬核期前まで起こり,7月上旬から下旬までが主要な感染時期であった.