著者
清宮 正徳 野村 文夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.446-449, 2010-06-01

はじめに 採血前に患者さんに手を握ってもらうことはよく行われている.しかしこの際,強く握ったり,手を握ったり開いたり(クレンチング)した後,肘静脈から採血すると,カリウムが有意に上昇してしまう.手に力を入れることにより筋肉からカリウムが放出されることが原因である1).クレンチングによるカリウムの上昇は,The New England Journal of Medicine(NEJM)誌をはじめとして度々報告され2~4),注意喚起されていることから比較的周知されていると考えるが,手を強く握るだけでもカリウムが上昇すること3,5)はあまり注意されていない.本稿では,カリウムの偽高値が患者さんの自主的な手を強く握る動作によって簡単に起こることを示すとともに,当院の採血室における偽高値対策を紹介する.