著者
清水 武則
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.8_32-8_37, 2022-08-01 (Released:2022-12-23)

日本のモンゴルへのODAは戦略性を有し、モンゴルのニーズにも合致したものであった。1990年の民主化の翌年には海部総理がサミット国のリーダーとして初めてモンゴルを訪問し、いち早く国際支援国会合の開催など支援策を打ち出し機動性もあった。背景には、ベーカー国務長官(米国)の日本への高い期待があった。日本のODAは90年代の経済危機の時代、2000年代の経済発展段階、2010年頃からの無償卒業国入り以降の新空港建設などの大規模事業への支援を経て、今日新たな段階に入った。無償供与は人道支援以外は基本的に実施困難であり、借款もモンゴルの債務負担能力がネックになっている。ODAの実施を梃子として発展してきた両国関係は、今日、戦略的パートナーシップの段階にあり、モンゴル国民の日本への信頼も良好な発展を示してきたが、ポストODAの時代においては民間交流が重要な役割を果たす必要がある。両国はEPAを締結し2016には発効したが、当初期待したモンゴルの対日輸出の拡大は達成できていない。モンゴルの中国への依存度が高まる中で日本としてできることは産業振興のための技術協力、日本からの観光客の拡大のための協力等が考えられるが、ODAの役割が確実に小さくなっていることだけは間違いない。