著者
清水 裕毅 松田 絵奈 日浦 ゆかり 今福 信一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.35-38, 2020-02-01 (Released:2020-05-12)
参考文献数
17

Toe web infection はグラム陰性菌の,とくに緑膿菌感染によって趾間のびらんや潰瘍を生じるのが特徴で,再発を繰り返す疾患である。日常診療でしばしば遭遇する疾患であるが本邦での報告数は少ない。 症例 1 は 66 歳,男性。受診の 2 週間前から右足の趾間に亀裂とびらんが出現し,近医で抗菌薬と抗真菌薬の外用を開始したが改善に乏しく,疼痛が増悪したため当科を受診した。右足の全趾間に悪臭と緑色の膿を伴うびらんがあり,辺縁に浸軟した角質を認めた。症例 2 は 42 歳,男性。受診の 2 週間前から左足の趾間にびらんと発赤が出現し近医で抗菌薬の外用と内服をするも改善なく当科に紹介された。左足の趾間に悪臭を伴うびらんがあり,びらんの辺縁に浸軟した角質があった。どちらの症例も細菌培養検査で Pseudomonas aeruginosa が検出された。抗菌薬の全身投与とスルファジアジン銀クリームの外用,デブリードマンを行い改善した。治療後に再度真菌検査を行ったが陰性であった。自験例は早期の真菌検査,細菌培養検査を行い抗菌薬治療とデブリードマンが効果的であったと考えた。
著者
川上 麻衣 清水 裕毅 久保田 由美子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.120-124, 2019-04-01 (Released:2019-05-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は 50 歳,女性。左下腿の虫刺様皮疹に対し市販外用薬を塗布していたが,同部が潰瘍を伴う隆起性病変となったため,1 カ月後,当科を受診した。初診時,左下腿内側に径 3 cm の黄色痂皮が付着した隆起性潰瘍病変を認め,ヨードコート®軟膏外用を開始したが悪化したため,壊疽性膿皮症などを疑った。血液検査で血清クロール濃度(Cl)が 156 mEq/l(正常:98∼108 mEq/l)と異常高値であったが,4 年前から高 Cl 血症であったことが判明した。詳細な問診の結果,約 10 年間,慢性頭痛に対してブロモバレリル尿素含有の市販鎮痛薬(ナロン®顆粒)を内服していることが判明した。臭素摂取過量による偽性高 Cl 血症を呈したと考え,血中臭素濃度を測定したところ 500 mg/l(正常 5 mg/l 以下)と中毒域であった。皮疹辺縁部の皮膚生検では表皮は偽癌性増殖を呈し,真皮内には膿瘍形成を認め,臭素疹と確定診断した。 その後,ナロン®顆粒の内服を中止したところ速やかに Cl は正常化し,皮疹も色素沈着となり軽快した。 軽微な外傷から生じた難治性の潰瘍病変は壊疽性膿皮症などをまず考えるが,臭化物の内服歴や高 Cl 血症を確認し,臭素疹を鑑別に入れる必要がある。