著者
渋谷 玉輝
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.44-56, 2012-03-20 (Released:2017-10-05)

本研究は,小学校4年生の教科書で出てきたカタカナ表記の語を英語母語話者が英単語として発音する場合,どの程度,児童がカタカナ語として認識できるかを調査することを目的とした。英語母語話者に依頼して録音した39話を,3つのグループの児童に横断的に聞かせ,その語をカタカナで表記させた。その結果,正答率が高い単語は,lemon, bus, mama, pen, juice, sport, time, cake, orangeの9語であり,lemon, bus, mama, pen, juice, sportの6語は正答者数が8割を超えていた。これらの単語は,mama以外は,すべて『英語ノート』で取り扱われる語彙リストに含まれていた。一方,正答率の低い単語では,world, hundred, leagueの3語で正答者かいなかった。これらの単語の特徴を明らかにするために,正答にならなかった児童の回答を分析したところ,児童は知っている類似する単語に置き換えたり,音声的に認知した文字で答えようとしたりしていた。全体としては,他の教科書や副読本に出てきたカタカナ英語を母語話者が英語として発音した場合,児童がカタカナ語で正確に表記した割合は,36.75%であった。以上の結果から,カタカナ英語において「表記しやすいカタカナ英語」「表記しにくいカタカナ英語」のそれぞれの特徴を分析し,カタカナ英語を活用するための具体的な方法の手がかりを提案した。