著者
渡辺謙 大石悠貴 柏野牧夫
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013-MUS-99, no.57, pp.1-4, 2013-05-04

これまで、多くの研究で音楽が人間に与える影響が調べられ、自律神経活動や呼吸が計測されてきた.しかし、音楽の各パラメータがどのように影響を与えるかはまだわかっていない.そこで、本研究では音のパラメータの中でもテンポに着目し、音のテンポと呼吸数の組み合わせが自律神経系に与える影響について調べた.本研究では、二つの実験を行い、それぞれ18名の健常者が参加した.実験条件として、音のテンポは60BPM,80BPM、呼吸数は15CPM,20CPMの全組み合わせ4条件で各5分間の実験を行った.音刺激は、単純なドラム音を用いて、呼吸はメトロノームを用いて統制した.実験中に、心電図と呼吸を計測し、自律神経活動の指標として平均心拍数と心拍の変動成分を解析した.結果として、20CPMで呼吸をしながら、80BPMのテンポの音を聴く条件のみで、交感神経活動が増加し、平均心拍数の増加が見られた.他の条件では平均心拍数の変化は見られなかった.本研究から、交感神経活動の顕著な増加には、交感神経中枢であるRVLMの一定以上の発火率と、音と呼吸リズムの同期という二つの条件が必要な可能性が示唆された.結論として、音楽が生体の交感神経活動に影響を与えるには、音楽のテンポと呼吸数の組み合わせが重要な要因になると考えられる.