著者
渡邊 萬次郎 黄 春江
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩石鉱物鉱床学会誌 (ISSN:00214825)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.184-204, 1942
被引用文献数
1

黄金坪礦床は岩手縣江刺郡伊手村の東部に属する北上山地の西佐縁部に在り,東北本線水澤驛より自動車約1時闇の行程にあり。<br> 地質は主として石灰岩及び基性火山岩乃至その凝灰岩の接觸變質物と認められる緑色變憂成岩と,これを貫ぬく糲岩及び石英斑岩乃至花崗岩から成る。<br> 斑糲岩の輝石は大部分ウラル石化し,且つ一部分黒雲母化し,石英斑岩の影響を受けたものと認められろ。<br> 礦床の一部は普通の含金石英脈で,斑糲岩,石英斑岩等を貫ぬくが,一部は斑糲岩の内部がぼゞ直立の圓〓状に角礫化し,その間隙を網状に貫ぬいた石英灰重石脈から成り,タングステン礦として開發せられる。<br> 灰重石は最初の晶出物であり,石英には微量の磁硫鐵礦,閃亜鉛鑛,黄銅礦を伴なつて金を含む。<br> 母岩の一部は黒雲母化,繊維状角閃石化,縁泥石化作用を受け,かゝる部分は概ね多量の灰重石をそのうちに生じた。<br> 母岩は多数の節理に富み,礦床は地下から4昇した高温高壓の熱水溶液が,その通路に當る母岩の節理に侵入し,これを押し擴げてその間隙に石英次重石等を生じた結果と認められる。<br> 本磯床の成生後,熱水溶液の張力によるstressの減少に伴なひ,礦床の一部は陥没し,その結果としてその邊縁ぬく断層を生じ,これまたその後の熱水溶液の通路となり,含金石英脈を生じたものと認められる。