著者
瀧澤 直子
出版者
東海大学医療技術短期大学
雑誌
東海大学医療技術短期大学総合看護研究施設論文集
巻号頁・発行日
vol.13, pp.16-28, 2004-07-30

筆者は、2002度デンマーク看護研修において、オーフスの精神病院見学の機会を得た。閉鎖病棟内で生活する患者達とコミュニケーションを試みた結果、筆者が知る日本の精神病院と顕著な違和感はなく、開放的な入院環境があったので、実際に許可をいただいた範囲内で撮影したデンマークの精神病棟内の様子を紹介する。また日本における精神障害者の入院環境も開放的な処遇が提供されていることが明らかになった。また我が国においては、近年、精神障害者の社会復帰と社会参加をめぐる状況が大きく進展しつつある。さらに、予防的な精神医療の発展が期待され、脱施設化から地域リハビリテーションヘと我が国の精神医療は動いており、看護師や保健師に期待される役割は大きくなっている。そこで、デンマークの精神医療に関する資料と筆者が見学したデンマークの精神病院で説明を受けた内容を整理し、さらに筆者が知る日本の精神病院の状況を整理しながら、現在の日本の精神科医療の現状と課題について文献検索をしてみた。その結果、デンマークと日本においては、どちらの場合も、地域生活の維持、社会参加の促進が期待されていることが分かった。また、デンマークの地域精神医療での看護師の役割りは、患者との接触と他職種との連携があるが、現在の日本における精神科看護師は行政や地域で担う職務というより、まだまだ入院病棟においてその機能が期待されていることが分かった。
著者
瀧澤 直子
出版者
東海大学医療技術短期大学
雑誌
東海大学医療技術短期大学総合看護研究施設年報
巻号頁・発行日
vol.12, pp.46-51, 2003-06-30

かつて日本における精神障害者の概念は、何をするかわからない予後不良の病気であった。そのため疾患重視の医療が主流で、精神科看護の内容は、患者の監禁と拘束、そして監視であった。一方、中世ヨーロッパの潮流の中でデンマークの精神科看護は、迫害から人道的な視点で鎖をはずし、人間性重視の医療が提供され、訓練を受けた中流階級の女性が精神科看護を担っていた。今日、わが国において、精神分裂病から統合失調症に名称が変更になり、入院中心の看護から社会復帰への精神看護が期待されている。そこで、福祉国家であるデンマークの精神看護について、今回の看護研修で入手した、Neils Buusの論文である「When nurses took their place in danish psychiatry」を基にしてデンマークにおける精神看護を要約した。また現在の日本の精神障害者に対する処遇をまとめ、デンマークと日本の精神看護を比較した結果、開放的な処遇のもとで心のこもったきめ細やかな対応と、患者の可能性を信じることが援助の基本であるという精神保健看護の展望が見えた。