著者
熊崎 実
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.16-23,71, 1984
被引用文献数
1

昭和48年10月群馬県議会は, 利根川下流の東京都などにむけて 「 再認識を求める決議 」 を行った。その中に次のような文言が見える。 「 永い間, わが県は水源地帯保全のため, 治山, 砂防工事をはじめ, 造林事業の助成等には莫大な財力を費やし, 県民も又, 水源酒養林を維持し, すすんで植林の事業にあたってきた。…… 利根の水利用をあたかも既得権の如く考え, 天の恵みとする ( 下流の ) 姿勢は, 誠に遺憾である。… … 東京都を始めとする下流関係県は, 水源地帯における洪水調節, 治山, 防災ならびに植林事業に対し, 惜しみない支援を与え, … …受益者としての責任を果すべである 」 と。<BR>群馬県のみならず, 重要な河川の水源地帯において近年これと同じような不満が聞かれるようになった。そのような風潮を受けて昭和50年以降, 「 水源林基金 」 のような形で下流が上流の森林整備に協力する例が増えてきている。本稿では, こうした下流参加の事例を歴史的にあとずけながら, 上下流協力の今日的意味を考えてみたいと思う。