著者
狐塚 重治
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-38, 1978-01-01

娩出直後の胎盤の復元は未だ実現されていないが若しこれが出来るようになつたら臨床上の利点は非常に大きいと思われる.私は昭和37年依頼妊娠,分娩を通じて自分自身で取扱つた約10,000例の分娩を対象として胎盤を含めた卵膜腔の展開および復元のための基礎的な研究を行ない,ようやくその方法を確立し得た.その結果胎盤の付着部は1つの壁の場合もあり,両壁の場合もあり,それに伴つてその形態にも種々変化があることを認め,これを次のように分類した.即ち胎盤が1つの壁に附着するものを1壁附着,前後両壁に跨つて附着する場合を両壁附着とし,更に1壁附着を中央附着(これを細分してM_1, M_2, M_3, M_4に分けた)と側方附着(これを細分してS_1, S_2, S_3, S_4に分けた)に分け,また両壁附着を2M, 2S_1, 2S_中,2S_2, 2S_3に分けた. この分類法に従つて,昭和49年より昭和51年までの3年間の分娩例,4,231例の中,不詳78例,前置胎盤16例,双胎23例,子宮奇形32例を除いた4,082例(96.5%)を分類すると,1壁附着は3,811例(90.1%)量壁附着271例(6.4%)となつた.即ち1つの壁(主として後壁)に附着する場合が絶対的に多く,中でも側方附着が多いことがわかつた.更に細かく分けてみると,S_1が17%で最も多く,ついてM_2, S_4, S_2, M_1, S_3, M_4と次第に少なくなりM_3は特に少なくなつている.両壁附着は非常に少なく,271例,6.4%を占めるに過ぎないが,形態に変化が多く,形態異常と言われる例の大部分が之に属している.尚前置胎盤,子宮奇形,双胎等はそれぞれ特異な興味ある形態を示す.