著者
王 伯勛 洪 明宏 邱 宗成
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_1-1_10, 2017

<p> 本研究は、民間習俗としての地域における鎮物の造形を調査し、広東省・マカオを対象として、「土地神」「石敢當」等民俗資料を広く収集したものである。広東は「土地神」信仰が絶対多数を占めており、伝統的な吉祥文様が描かれた紙「春聯」と立体の簪花(かんざし)により飾られた「天官賜福」「門口土地財神」の牌位を頻繁に目にする。マカオの「石敢當」の数は「土地神」には及ばないもの、民間風俗と文化的背景から「土地神」と「石敢當」とが融合し、幸福祈願、富貴、魔除け、厄除け等心理的必要性に対応する様々な霊石信仰が生まれた。「石敢當」は路地、住宅、オフィス、商店、廟、集落神龕等の場所に分布し、石板、石碑、石塊、山型の四形態に大別される。広東とマカオの民間信仰に関しては、「土地神」と「石敢當」の設置と装飾から、民族独自の視覚的記号が垣間見える。例えば、漢字の字体、伝統的象徴的文様等は、伝統文化の保存・継承を体現するものでもある。</p>