著者
琴 鍾愛
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.1-18, 2005-04-01

筆者は談話展開の方法の地域差は,話者が情報内容を効果的に伝えるために相手に送る談話標識に反映されていると考え,談話標識の出現傾向から談話展開の地域差について研究を進めてきた。本稿では,この立場から東京方言,大阪方言の高年層話者における説明的談話を量的に分析し,さらに,仙台方言と比較することで,三つの方言の違いを明らかにする。分析の結果,仙台方言は自分が発話権を持つことをアピールし,相手との情報共有を積極的に働きかけていく方言であることがわかった。一方,大阪方言はそうした相手に対する働きかけは消極的であり,話の進行を単純にマークしつつ,自分で納得することに主眼を置く方言であると考えられた。東京方言は総合的に見て,両者の中間に位置するが,仙台方言により近い面をもっていると判断することができた。