著者
生田 博之 長尾 知昭 山岡 学 岩城 正宏
出版者
一般社団法人 日本薬物動態学会
雑誌
日本薬物動態学会年会講演要旨集 第18回日本薬物動態学会年会
巻号頁・発行日
pp.265, 2003 (Released:2004-01-08)

【目的】アジュバント関節炎(AA)ラットにおいてCYPやグルクロン酸抱合活性が減少することを演者らは報告している。しかし,胆汁排泄に関わるトランスポーターへの影響についての報告は少ない。本研究では,イブプロフェン(IB)をモデル薬物としてAAラットにおけるIBの胆汁排泄ならびにP-450量およびグルクロン酸抱合活性への影響について調べた。さらに,肝臓におけるP-gp/mdr1a,MRP2およびMRP3のmRNA発現量の変化についても検討した。【方法】実験にはSprague-Dawley系雌性ラットを使用した。正常およびAAラットにIBのラセミ体(20 mg/kg)を静脈内投与し,血漿中のIBおよび胆汁中のイブプロフェングルクロナイド(IBG)をHPLC法により測定した。また,肝ミクロソームを用いてP-450量,グルクロン酸抱合活性を測定した。肝臓mdr1a,MRP2およびMRP3のmRNA発現量はRT-PCR法により測定した。【結果・考察】R-IBの全身クリアランス(CLtot)は,正常ラットと比較してAAラットでは約1.7倍上昇したが,S-IBのCLtotはほぼ同様であった。P-450量およびグルクロン酸抱合活性はAAラットで約1/2減少した。また,IBの蛋白結合がAAラットで減少した。それ故,AAラットにおけるCLtotの上昇は蛋白結合の減少によるものと考えられる。一方,累積胆汁排泄においてR-IBGおよびS-IBGはAAラットでそれぞれ60 %,40 %減少した。mdr1aおよびMRP3のmRNA発現量についてはAAラットで有意な変化はみられなかったが,MRP2においてはAAラットで減少する傾向がみられた。IBGはMRP2の基質であることから,AAラットにおけるIBG胆汁排泄の減少は少なくともMRP2発現レベルの減少が関与していることが示唆された。