著者
杵渕 彰 小曽戸 洋 木村 容子 藤井 泰志 稲木 一元 永尾 幸 近藤 亨子 山崎 麻由子 田中 博幸 加藤 香里 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.180-184, 2014 (Released:2014-11-26)
参考文献数
18
被引用文献数
4 5

今回,我々は,抑肝散の原典について『薛氏医案』を中心に検討した。抑肝散の記載は,薛己の著書では『保嬰金鏡録』(1550年)にみられ,また,薛己の校訂した文献では,銭乙の『小児薬証直訣』(1551年),薛鎧の『保嬰撮要』(1556年)および陳文仲の『小児痘疹方論』(1550年)に認められた。『保嬰金鏡録』および『小児痘疹方論』には,「愚製」と記述されていた。一方,熊宗立の『類証小児痘疹方論』には「愚製」の記載がなく,また,薛己校訂以外の『小児薬証直訣』には抑肝散の記載は認められないため,抑肝散は薛己の創方である可能性が高いと考えられた。これまで,抑肝散の原典は薛鎧の『保嬰撮要』とされていたが,今回,「愚製」の表現に着目して古典を検討したところ,薛己の父である薛鎧ではなく,薛己の創方であり,原典は薛己の『保嬰金鏡録』であると考えられた。