著者
大曽根 敏彰 田中 善啓
出版者
特定非営利活動法人 日本CT技術学会
雑誌
日本CT技術学会雑誌 (ISSN:24342769)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.7, 2020 (Released:2020-10-23)
参考文献数
15

要点1) 低管電圧撮影時,局所被ばく低減機構を使用しても前面部の血管抽出能に影響を及ぼさなかった.2) 局所被ばく低減機構を使用すると前面部の吸収線量は低下,後面部が増加する傾向を示し,水晶体付近の被ばく線量を低下させることが可能であった.3) 低管電圧を使用した頭部CTA撮影において,局所被ばく低減機構を使用しても前面部の血管抽出能を低下させず,水晶体の被ばくを抑える可能性を示唆した.  要旨頭部CTAの画質向上を目的として低管電圧撮影を使用した際,入射表面線量が増加するため水晶体の被ばく増加が懸念される.近年,体表面の臓器に対する局所被ばく低減機構(X-CARE)が開発されているが,前面部の出力線量を低下させているため前面部の血管抽出能に影響を与える可能性がある.本研究では頭部CTAの画質向上を目的とした低管電圧撮影において,X-CAREを使用した際の前面部における血管抽出能の評価と,辺縁部の吸収線量分布,及び水晶体付近の吸収線量低減率について検討した.管電圧は120 kVpおよび100 kVp,X-CAREは使用または未使用で,自作頭部模擬血管ファントムを用いて撮影し,得られた画像をVR構築し視覚評価にて評価した.辺縁部の吸収線量分布は被曝線量測定用ファントムの辺縁部に線量計を30°毎360°配置し,角度毎に吸収線量を測定,X-CARE使用時の吸収線量低減率を算出した.結果より低管電圧を用いると血管抽出能は向上し,X-CARE使用における血管抽出能の低下は認めなかった.辺縁部の吸収線量分布については前面部の吸収線量は低下,後面部は増加し,水晶体付近の吸収線量低減率は100 kVpに対して22.2%,120 kVpに対して16.7%低減した.このことからX-CAREを使用しても前面部の血管抽出能には影響を与えず,水晶体の被ばくを抑える可能性を示唆した.