著者
田中士郎 田中弘美
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1521-1526, 2011-07-20

実世界に忠実かつ物体操作が可能な仮想空間を実現するためには,物体の形状等の視覚情報だけでなく, 重量,摩擦,弾性等の触覚情報が必要である.我々は, 摩擦の研究分野において提案されている摩擦モデルに基づいて, 摩擦現象を仮想空間で再現する研究を進めている. 実世界に存在する物体の摩擦特性を推定するには, 外力を与えられた物体の変位を取得する必要があるが, 特に予すべりはその変位が数マイクロと微小であるため, 観測は非常に困難である. そこで本論文では, 安定姿勢に置かれている物体に対して, 外力を与えた際の物体の変位を高精度に求める手法を提案する. まず, 物体に外力を与える手段としてロボットマニピュレータを使用し, 物体が滑り出す過程を1秒間に500フレームの撮影が可能な高速度カメラで観測し画像を取得する. 次に1フレーム目の画像において基準領域を指定し, 他のフレーム画像の各ピクセルを中心とした領域との相関値を求める. 本論文で提案する相関値のモデル式を用いて, 相関値分布とのフィッティングを行い, 相関値の最も高い物体座標を推定する. 各フレーム画像のフィッティングにおける評価値および真値からの誤差標準偏差から, 物体変位の信頼性が高いことを確認した.