著者
白川 憲夫 深澤 正徳
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.113-123, 1998-03-31 (Released:2010-06-08)
参考文献数
22

木酢液のシバに対する生育調節作用を検討した。1.ケンタッキーブルーグラス1品種, ベントグラス3品種を供試して水耕栽培で木酢液の作用を調べたところ, 地上部の生育はいずれのシバの場合も処理濃度が増加するにしたがって抑制されたが, 根部では逆に生育促進作用が見られ, 共通する最適処理濃度は0.05%と考えられた。しかし, 0.5%以上の処理ではいずれのシバに対しても強い根の伸長抑制作用を示した。2.ベントグラス・ペンクロス, ケンタッキーブルーグラス, コウライシバのソッドの生育に及ぼす木酢液の影響を水耕栽培で検討したところ, 栽培液のpH調整の有無にかかわらず0.05%処理が, 供試シバに共通して根部の生育を促進した。しかし, ベントグラス・ペンクロスではとくにpH調整区の0.25%以上の処理, コウライシバでは0.5%以上の処理は根部の生育を抑制した。一方, 地上部の生育はベントグラス・ペンクロスの場合pH調整区の0.25~0.5%処理, pH未調整区の0.1%処理, 同様にケンタッキーブルーグラスではそれぞれ0.01~0.1%処理, 0.05%処理, コウライシバではpHの調整有無にかかわらず0.05~0.1%処理で生育促進作用が見られたが, それ以上の処理濃度ではケンタッキーブルーグラス及びコウライシバの場合0.5%以上の処理で生育抑制作用が発現した。3.土耕栽培のシバ4種を供試して, 木酢液の長期連用試験を行ったところ, コウライシバ, ノシバ, ケンタッキーブルーグラスの1a当り0.1~1l, 12回処理で地上部の生育促進作用が見られた。ベントグラス・ペンクロスでは, 最大15%程度の地上部重の減少が見られたが, 根部乾物重は1a当り0.1~1l処理で他の供試シバと同様に増加した。4.コウライシバを用いて木酢液の耐寒性向上作用を調べたところ, 1a当り1~54処理で明らかに低温生育性は向上した。5.以上の結果から, 木酢液はシバの生育及び耐寒性に良好な影響を与えることが認められたが, 今後は圃場試験により上記の作用を確認してみたい。