- 著者
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益村 聖
- 出版者
- 日本植物分類学会
- 雑誌
- 植物分類・地理 (ISSN:00016799)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.5, pp.163-166, 1989-12
北部九州には,ドジョウツナギが平地や山間部の湿地にやや普通に産し,ヒロハノドジョウツナギが温帯域の清流沿いにごく希に産する。ところが,暖帯域の山足湿地に,〓生し匍匐枝をもつ点は前者的で,根茎を持ち葉鞘の格子紋が顕著な点は後者に似る中間的な固体群が4箇所で発見された。それでこの度,これら中間形と前二種を改めて入手し,詳細に比較検討した。体細胞染色体はドジョウツナギでは2n=40,ヒロハノイドジョウツナギでは2n=20であったが,中間形では調査した4産地とも2n=30を数えた。その他,花粉はいずれも中空,不定形,染色性(稔性)がなかった。これ等の事実から,この中間形はドジョウツナギとヒロハノイドジョウツナギを母種とする自然雑種であるとの結論に達し,学名:Glyceria×tokitana MASUMURA hybr. nov. 和名:マンゴクドジョウツナギと命名して発表する。