著者
宮川 孝 尾松 正元 直原 孝之 新井 直人
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.209-215, 2005
被引用文献数
3

紙を白く見せるために日常的に蛍光物質 (蛍光増白剤=蛍光染料) が使用されているが, 食品衛生法の食品添加物としての認可を受けていない蛍光増白剤は, 合成着色料の一種として規制され, 検査法としては昭和46年5月8日付厚生省課長通知環食第244号「蛍光物質を使用した器具または容器包装の検査法について」が定められ運用されてきた。<br>02年12月に保健所の検査でタイ製の紙製ビーフントレー (意図的に原紙, 塗工層に蛍光増白剤を添加と推定) より蛍光増白剤の溶出が確認され, 食品の回収命令が出たのが発端となり, 03年7月には蛍光増白剤を意図的に使用していない紙製トレー (古紙配合品) でも回収指導を受ける事態が発生した。このままでは古紙配合製品すべて (白板紙のみならずライナー, 段ボールまで) が回収対象となり, 関係業界を巻き込む大問題に発展する恐れが出てきた。一方, 公定法にもかかわらず指定検査機関間で異なる判定結果となることもわかった。<br>今回, この蛍光物質溶出検査法 (環食第244号) の問題点を抽出し, その原因を明らかにし, この結果をもとに, 日本製紙連合会から厚生労働省に検査法の見直しを03年11月9日に申し入れ, 異例とも言える速さで04年1月7日付厚生労働省課長通知 (食安基発第0107001号・食安監発第0107001号) で検査法が見直され, 判定基準も写真で実例が示されることにより, 古紙配合製品も概ね使用できる見通しとなった。ここまでの経緯と海外の規制状況もあわせて紹介する。