著者
木村 美奈子 飯塚 政弘 保坂 薫子 大隅 康之 相良 志穂
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.774-780, 2014 (Released:2014-06-27)
参考文献数
21

目的:近年,胃がん発生の危険因子であるHelicobacter pylori(H. pylori)の血中抗体と血清ペプシノゲン(PG)を用いた胃がんリスク検診が注目されており,当施設でも平成23年度よりこれらの検査をオプション検査として導入した.今回,胃X線検査で描出された所見とH. pylori抗体およびPG検査結果を比較することにより,胃X線検査のH. pylori感染予測における有用性を検討した.対象と方法:平成23年4月~平成24年3月の当施設健診受診者のうち,胃X 線検査と同時にH. pylori抗体検査またはPG検査を行った200人を対象とし,胃X線検査による萎縮性胃炎を中心とした慢性胃炎(以下,慢性胃炎)の有無とH. pylori抗体・PG検査結果を比較し,胃X線検査によるH. pylori感染診断の精度について検討を行った.結果:H. pylori抗体陽性例の96.8%,H. pylori抗体・PGともに陽性例の100%に胃X線検査で慢性胃炎が認められた.H. pylori抗体・PGともに陰性例では,胃X 線検査で慢性胃炎が認められた頻度は8.9%であった.H. pylori抗体陽性例およびH. pylori抗体陰性かつPG陽性例をH. pylori感染例と考えた場合,胃X線検査では感度91.5%,特異度93.3%,正診率92.3%でH. pylori感染が診断できた.結論:胃X線検査はH. pylori感染の予測において有用な検査と考えられた.