著者
矢敷 彩子 山口 正士
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2005 (Released:2005-03-17)

沖縄本島沿岸の砂浜には潮干狩りの対象となる主な二枚貝として、イソハマグリ(Atactodea striata)、リュウキュウナミノコ(Donax faba)、ナミノコガイ(D. cuneatus) の3種が分布している。1980年代までは、貝を掘る潮干狩りの人々で砂浜にぎわっていたが、それ以降その姿をほとんどみかけなくなった。本研究では砂浜に生息する食用二枚貝について、全島的に貝塚から出土した貝類のデータを基本情報とし、それを現生貝類の分布量と比較して資源量の変遷を考察した。貝塚データと比較するために貝塚に近い砂浜を40箇所選出し、1998年から1999年に現生貝類調査を行った。現生貝類の砂浜における「単位掘り出し時間当たりの個体数」を種類ごとに求め、「多」、「普通」、「少」、「無」にランクわけした。貝塚出土の貝類データについても現生貝類と同様、相対的にランクわけした。その結果、沖縄本島では貝塚の出土状況から資源量が大きかったとみなされた砂浜の多くで、現生の貝類分布では潮干狩り可能な状態の生息密度に及ばず、明らかに資源量は減少したと考えられた。また金武湾沿岸部などの貝塚から出土し、沖縄において食用資源として過去に生息が推測されたハマグリ類 (Meretrix spp.) は、今回の調査では確認されなかった。砂浜貝類集団の生息分布には時空間的な変動が激しく、自然変動で増減することがよく知られており、貝塚時代に比べ現在の資源量が少ないことを単に環境変化の影響と言い切ることはできない。しかし埋立や護岸整備などによる砂浜の消失が各地に見られ、ハマグリ類 (Meretrix spp.) の地域絶滅の可能性もあることから、砂浜における食用貝類資源が乏しくなっている現状が推察された。