- 著者
-
矢野 和歌子
- 出版者
- 専門日本語教育学会
- 雑誌
- 専門日本語教育研究 (ISSN:13451995)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.67-72, 2014-12-26 (Released:2016-11-20)
- 参考文献数
- 6
本研究は、卒業論文の実情を踏まえた指導や教材の開発を目的とし、人文・社会学系の4大学4学部の優秀卒業論文計35編を対象に引用の形式、目的など、引用の使用実態について調査した。その結果、引用の形式としては、間接引用の使用が多いという傾向が明らかになった。また、段落単位での間接引用など、既刊の教材ではあまり扱われていない類型もみられた。留学生の論説文における引用の使用について調査した矢野1)との比較では、優秀卒業論文において、「論点を分析する観点の提示」、「解釈の提示」など幅広い目的で引用を活用していることが特徴として見られた。学部間の比較では、外国語学部、社会学部の論文全編で「論点を分析する観点の提示」を目的とした引用がなされていること、20編中17編で「解釈を提示する」目的での引用が見られる点が特筆できる。社会学部の論文では、「自己の主張の補強」を目的とした引用が全編で活用されていることも特徴である。また、商学部、経営学部の論文では、「先行研究の整理」をする目的での使用が多く、目的が限定的で引用の割合も少ないという傾向が見られた。これらの結果から、指導への示唆をまとめた。