著者
矢野 涼介
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.41-61, 2019-11-22 (Released:2019-11-22)
参考文献数
39

本研究では、日本全国の公共図書館において、排外主義に関連する書籍について所蔵調査を行い、公共図書館の所蔵のバランスや、排外主義に関連する書籍はどのようなものが所蔵されやすいのかを明らかにした。2000 年以降に出版された、排外主義および反排外主義に関連する書籍を調査対象とし、内容に即してこれらの書籍を「排外書籍」「反排外書籍」「中立書籍」に分類した。カーリル図書館 API が対応している 1,344 の図書館システム、5,333 の日本の公共図書館について、調査対象書籍 162 点の所蔵調査を行った。図書館への所蔵に影響を与える諸要因について回帰分析を行ったところ、書籍に反排外書籍的な主張を含んでいると、自治体内の図書館に所蔵されやすいことが分かった。排外書籍と反排外書籍のバランスを示す「偏り尺度(d)」を図書館別に測定したところ、都道府県立図書館は他の設置母体の図書館に比べて、排外書籍を所蔵しない傾向にあることが明らかになった。