著者
ロバートソン リンダ 石井 康正
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.830-836,021, 2003-06-01 (Released:2010-10-27)
参考文献数
6

抄紙機中では多くの微生物が増殖可能である。これら微生物は, 肉眼で見られる汚れを形成して, シート欠陥や穴, あるいは断紙も発生する。微生物は。パルプや各種製紙工程薬品の性能低下と腐敗を招くこともある。この腐敗は, 繊維の強度低下や製品の品質低下を招く異臭発生やデンプン粘度低下及びその他の多様な問題を起こすことがある。トリプトングルコース寒天培地やペトリフィルム (PetrifilmsTM) 培地による48時間培養等の様な単純な好気性プレート培養法では, 問題を生じる微生物の全てを把握できる分けではない。また, 浮遊性 (Planktonic) の微生物については, その菌数値と装置表面での汚れ付着量とは相関しない。装置表面に付着してバイオフィルムを形成する微生物は, 浮遊性微生物とは異なる性質を持つ付着性 (Sessile) と呼ばれるものである。このような背景から, 微生物に関する問題を診断することが難しい。単純なプレート培養法のみに頼って好気性菌の検出を行うと問題の誤診を招く可能性がある。そして, 誤った結論を招く可能性がある。製紙工場での問題を解決するためには, 抄紙系に生息している微生物の環境による挙動を全体的に理解しておく必要がある。本報では一般に受入れられているプレート培養法の限界について論じ, 3つのケーススタディーを用いて, 微生物に関する問題を解決するための診断方法を紹介する。