著者
井口 浩一 大饗 和憲 石井 桂輔
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.29-35, 2015-06-25 (Released:2015-07-20)
参考文献数
45

我が国では,頚髄損傷に対する急性期手術は保存的治療との優劣の判定が困難であることから,これまで否定的であった.特に頚髄損傷完全麻痺は麻痺の改善の可能性は極めて低いとされ,急性期に手術が行われることは稀であった.しかし,近年,頚椎脱臼による完全麻痺に対して4〜6時間以内の迅速な整復により,麻痺が劇的に改善する症例があることが報告されている.このことから,頚椎骨折や非骨傷性頚髄損傷による麻痺に関しても,極めて早期の減圧術により麻痺が改善する可能性が示唆される.頚髄損傷に対する急性期手術を迅速かつ安全に行い,種々の周術期合併症に対して適切に対応するには脊椎外科医のみでは困難であり,手術室,集中治療室,リハビリテーション各分野による集学的アプローチが必要である.