著者
石井 正治 春田 伸 五十嵐 泰夫
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.652-657, 2009-09-15
被引用文献数
1

鹿児島市から東へ約40kmの所に,酢の町―霧島市福山町がある。福山は桜島を望む風光明媚の地で,一年中温暖な気候に恵まれ,背後の山あいから湧き出る天然の地下水は非常に良質で,醸造に必須の条件を備えている。福山米酢の起こりは約180年前に遡り,54lの壼に,蒸米,米麹,水を加えた後,液上面に振り麹と称して老ねた麹を撒く。この振り麹が上面にある間に,糖化とアルコール発酵が行われる。アルコール発酵が終了すると,振り麹は自然に落下して,次に液表面に酢酸菌膜が張り,酢酸発酵が行われる。伝統的な製法をそのまま引き継いで,今日に至っている。本稿では壼造り黒酢について,微生物学見地から解説をして頂いた。