著者
石井 秀昌 西野 成昭
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.154-174, 2021 (Released:2021-09-28)
参考文献数
25

自己の利得最大化に反する行動を説明するモデルとして社会的選好の研究が進められてきたが,協調ゲームのように,元々好ましい状態がナッシュ均衡であるゲームに社会的選好が与える影響はわかっていない.本研究では,プレイヤが不平等回避選好を持つことで生じる協調ゲームのダイナミクスの変化を分析する.適応度として効用関数の値を用いるレプリケータダイナミクスを考え,その解析と数値計算を通して,不平等回避の強さがゲームの均衡にも,均衡に至る戦略分布のダイナミクスにも影響することを明らかにする.本研究を通して,協調ゲームでは不平等回避選好が協調状態の実現を阻害し得ること,また社会的選好がゲームに与える影響を理解する上で,ゲームの均衡だけでなくダイナミクスの分析も重要であることを示す.