著者
石川 利博
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.223-227, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

向精神薬,特にベンゾジアゼピン系薬による依存が問題になってきている。これまで,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors;SSRI)のような代替薬がベンゾジアゼピン系薬に置換できるのではないかと示唆されてきた。今回,向精神薬を柴胡桂枝湯,柴胡桂枝乾姜湯,帰脾湯,加味逍遥散,柴胡加竜骨牡蛎湯などの漢方薬に置換しえた神経症の2症例を報告する。2症例はベンゾジアゼピン系薬を中止する際,症例1は反跳が,症例2は離脱症状と症状再発が出現した。これらの症状は徐々に解消していったが,漢方薬もまたその役を担ったと思われる。漢方治療はベンゾジアゼピン系薬などの向精神薬の代替療法になりうることが示唆された。
著者
石川 利博
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.234-242, 2013 (Released:2013-11-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

漢方医学では「恐怖」は「腎」と密接な関係がある。故に,腎の障害に使用する六味丸が恐怖と関連のある精神疾患の症状に有効であると期待できる。筆者は六味丸が有効であった神経症の7例を経験した。3例は適応障害,2例は社会恐怖,1例は全般性不安障害,1例は心身症であった。3例は六味丸単独で有効であり,4例はエチゾラムや他の漢方方剤が必要であった。全例に腰膝酸軟,小腹不仁,尺部の弱脈のような腎虚を示す症候が存在した。全例に熱証の症候があり,6例に気虚の症候が存在した。さらに,症例では,六味丸は恐怖,不安や睡眠障害だけでなく,排尿障害,同時に存在する寒熱証,不正性器出血に有効であった。
著者
石川 利博 金 兌勝 梁 哲周
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.750-759, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
11

黄帝内経・霊枢には「陰陽五態」「陰陽二十五人」と二種類の類型が存在する。それは「性格」「体格」「体質」「治療」に項目を分けてまとめ直すことができる。それらは相互に密接に関連している。これは,「形神合一」という概念があることで説明できる。「形」即ち「身体」と「神」即ち「精神」が合一であるという整体観が基礎になっている。また,この類型を性格類型とみなすと,現代の心理学的な性格類型と比較する事が出来る。クレッチマーやコルマンは性格と体格,性格と相貌を関連付けて論じている。体格,相貌は望診である。一方,性格は望診と問診両方に当たる。これらの知見を借りることで,漢方的な診断の技術を上げられるのではないかと考える。