- 著者
-
石川 利博
- 出版者
- 一般社団法人 日本東洋医学会
- 雑誌
- 日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.4, pp.234-242, 2013 (Released:2013-11-19)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
1
1
漢方医学では「恐怖」は「腎」と密接な関係がある。故に,腎の障害に使用する六味丸が恐怖と関連のある精神疾患の症状に有効であると期待できる。筆者は六味丸が有効であった神経症の7例を経験した。3例は適応障害,2例は社会恐怖,1例は全般性不安障害,1例は心身症であった。3例は六味丸単独で有効であり,4例はエチゾラムや他の漢方方剤が必要であった。全例に腰膝酸軟,小腹不仁,尺部の弱脈のような腎虚を示す症候が存在した。全例に熱証の症候があり,6例に気虚の症候が存在した。さらに,症例では,六味丸は恐怖,不安や睡眠障害だけでなく,排尿障害,同時に存在する寒熱証,不正性器出血に有効であった。